既製品の出汁の素もいいけれど、自分でとった出汁の美味しさは格別ですね。浄水と天然の素材を使った出汁なら、なおのこと、余分なものが入っていないという安心感もあります。「でも、いちいち出汁をとるのは面倒で……」という方のために、日本料理の名人であり、テレビや雑誌でもおなじみの笠原将弘さんが、簡単なのにうまみたっぷりの出汁のとり方を伝授してくれました。料理の味が格段に上がり、ご家族にも喜ばれること間違いなしです。
「賛否両論」 店主
高校卒業後、「正月屋吉兆」での9年間の修業を経て実家の焼き鳥屋を継承し、2004年に東京・恵比寿で自身の店を開業。一躍、予約の取れない人気店に。2013年名古屋に、2019年金沢に「賛否両論」直営店を開店する一方、家庭で気軽に楽しめる和食メニューを各メディアで発信。2023年からはYouTubeチャンネルも開設。
YouTube-【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道
日本料理は“水の料理”と呼ばれているんです
日本料理にとって、まじり気のない澄んだ水は欠かせないものです。
なぜなら、日本料理はほかの国の料理に比べて調味料や香辛料の使用が控えめで、素材と出汁のうまみを味わう料理だからです。その出汁は、水に材料のおいしいところを抽出させたもの。ベースとなる水にカルキなどの余分なものが入っていると、うま味が出にくく美味しい出汁にはなりません。また、料理人が野菜を茹でるときは、一度ボールの中で水を吸わせます。そうすると早く美味しく茹で上がるのです。吸わせる水や茹でる水が美味しくなければ、せっかくの素材の味が台無しになってしまうのは当たり前ですね。
日本料理は“水の料理”ともいわれるほど、水が大事です。だから和食の料理人は、みんな浄水器を使っていますよ。家庭でも、おいしい出汁を味わいたいなら、浄水器を使うことをおすすめします。
「笠原流1.5番出汁」の作り置きがお勧めです
「いちいち出汁をとるのは面倒」という方にお勧めしているのが、家庭料理にぴったりな「笠原流1.5番出汁」です。汁物、煮物など何に使ってもおいしく仕上がる便利な出汁で、冷蔵庫で2~3日は日持ちするので、たっぷり作って数回に分けて使うといいのではないでしょうか。冷凍しておくのもいい方法です。100ml程度に小分けにして冷凍すると、何かと重宝しますよ
①用意するもの:水1リットル、出汁昆布10g、かつお節20g
上記は作りやすい分量。もっと多く作りたいときは、それぞれを倍量にする
一気に入れてぐつぐつ煮出してOKです
「笠原流1.5番出汁」の特長の1つが、簡単なこと。教科書に書いてある一番出汁のとり方と違い、昆布とかつお節を別々に鍋に入れる必要はありません。
①鍋に材料を全部入れる
②強火にかけて一気に沸かす。沸いたら弱火にして5~6分コトコト煮る。アクは取らなくても大丈夫
鍋に蓋をしないこと。蓋をするとにごってしまい澄んだ味になりません。
ぎゅうぎゅう絞りましょう
昆布とかつお節を煮出したらザルにあけて濾し、おたまで絞ります。こうすることで、しっかりと濃く深い味の出汁になります。
①ザルにあける
写真はザル2枚とキッチンペーパーで濾していますが、家庭ではザル1枚でも大丈夫。多少かつお節の澱(底に沈んだかす)が入りますが、それも味わいと考えて
②おたまを押し付けるようにして絞る
③できあがり!
出汁をとったあとのかつお節や昆布も、捨てずに利用して欲しいですね。かつお節はほぐしてしょうゆと砂糖で煮て、ご飯のお供に。昆布は細切りにしてかつお節同様に煮てもいいし、炒めものに加えてもおいしく食べられます。細く切って出汁と一緒に味噌汁や吸い物の具にしてもいいですね。
できあがった出汁は豊かな香りが立ちのぼり、うま味がたっぷり。濃いけれど邪魔なニオイが一切ないやさしく澄んだ味わいです。これが家庭であっという間につくれるのだから、笠原さん流の簡単テクニックに感心させられること請け合いです。同時に、きれいな水が身近にある幸せが、改めて感じられるのではないでしょうか。
「笠原流1.5番出汁」は和食なら何にでも合いますが、「出汁のおいしさを感じたいなら、野菜料理がお勧め」と笠原さん。さっそく季節の野菜を料理してみませんか。
出汁のうまみを存分に楽しめる「ナスの煮びたし」
今回はとろナスを使っていますが、ほかのナスで作ってもおいしく仕上がります。またナス以外の野菜を使ってもおいしくできます。ジャガイモやサトイモ、カブ、レンコン、キノコなどは、下ゆで不要で味が染みやすいのでおすすめです。ぜひお試しを。
<材料(2人分)>
・なす 3本
・みょうが 1/2個
・大葉 2枚
・A(だし 250㏄、しょうゆ 20㏄、みりん 20㏄、砂糖 小さじ1)
<作り方>
①なすはへたを取り一口大の乱切りにしてさっと水で洗う。
②みょうが、大葉を千切りにして さっと水にさらして混ぜ合わせ 水けをきる。
③鍋にAとなすをいれ中火にかけ沸いたら弱火にして、アルミ箔でおとしぶたをして10分煮る。
④なすがやわらかくなれば火を止めて冷ます。器に盛り②をとめる。
ぜひ、浄水を活かして「笠原流1.5番出汁」試してみてください!
次は、冬になると活躍する“土鍋”を活かした『冬レシピ』を公開予定です!次回もお楽しみに!