
文=ERIKO
こんにちは。定住旅行家のERIKOです。
私はさまざまな国で現地の家庭に滞在し、暮らしを体験するという旅をしています。
今までに訪れた国は50カ国以上、滞在した家庭は100以上になります。
本コラムでは、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマに、旅でみつけたサステイナブルな暮らしをお届けします。
第3回はジョージア。国土のあちこちで豊かな水が湧き出るジョージアは、昔ながらの製法を守るワインの産地です。自然の力でつくられるサステイナブルなワインが今、世界の注目を集めています。

- 目次 -
・東西の十字路 ゆたかな自然と独自の文化
・いたるところに湧き出る 水の楽園
・伝統的な製法を守る サステイナブルワイン
・ジョージアの人たちが大切にしてきた儀式的宴会
東西の十字路 ゆたかな自然と独自の文化
皆さんは食品や日用品など、日々の暮らしに必要なものを買うとき、どのようなポイントを意識するでしょうか。
目的に叶ったもの、デザイン、値段、製造国などさまざまな要素を比較しながら買い求めることが多いのではないでしょうか。
私も買い物をするとき、自分の使用目的などに見合ったものを基準に選んでいました。しかし、2017年に滞在したジョージアという国での経験がきっかけで、自分が消費するものが、どのようにつくられて、どんな人びとが関わっているかということに興味を持つようになりました。


国内に数えきれないほどある水源

たっぷりのスパイスを使ったジョージア料理

世界遺産に登録されているネバネティ地方のウシュグリ村

肝臓に効くというメディシンウォーターの水源

ワインを醸造するクヴェヴリ

ワインの種で作られるスクラブ

葡萄の収穫を手伝う
家庭でつくられるのは主に白ワインです。葡萄の果汁だけでなく、皮や種も一緒に発酵させるため、タンニンが豊富で色は黄金色です。ジョージア人にとってワインは買うものでなく、つくるものなのです。

右が樽で、左がクヴェヴリで醸造された白ワイン。伝統製法のワインは美しい黄金色
どの家庭でもワインは自慢の我が子のように、自信を持って振る舞われます。秋の葡萄の収穫時期になると、相手の体調を聞くよりも先に、「葡萄の調子はどうだ?」という会話がされるほどなのだそうです。

ワイン畑には十字架や教会がある
ジョージアの人たちが大切にしてきた儀式的宴会
ジョージアには「スプラ」と呼ばれる儀式的宴会があり、そこではタマダと呼ばれる司会者が中心となって会が進行されます。
スプラは何十人も集まるような大規模なものから、友人たち数人で行われるこじんまりとしたものまで、さまざまです。
タマダの演説を皮切りに、参加者一人一人が、平和や長寿、友愛などを祈る演説を行い、詩が詠まれ、ポリフォニーと呼ばれる歌が合唱され、舞踊が踊られます。
このスプラでもワインは欠かせない存在です。お互いが腕を絡ませながら、カンツィと呼ばれる水牛の角でできた盃で一気に飲み干すのがジョージア流。
またスプラには、いくらお酒を飲んでも酔っ払ってはいけないというルールがあります。これが一般的な飲み会とスプラの大きく異なるところでもあり、賑やかさと厳粛な空気感が漂う独特な世界観を感じさせます。
テーブルに乗り切らないほどの、たくさんのジョージア料理を囲みながら、仲間と語り、同じ時間を共有する。その様子は、彼らの人生の日々の慰めのようでもあり、ジョージア人としてのアイデンティティをより一層深めているような光景でした。

伝統的な宴会「スプラ」