ルームスタイリスト・整理収納アドバイザーとして、引っ張りだこのひでまるさんは、モノとの向き合い方を見直したことで人生まで変わったといいます。
そんなひでまるさんに、“大好き”だけが並ぶおうち作りの秘訣から水回りの整理整頓・お掃除のコツまで、誰もが毎日、一生付き合うものごとを、“心地よくがんばる”ための方法を教えてもらいました。
ひでまる(安藤秀通)さん
ルームスタイリスト・整理収納アドバイザー。1988年生まれ。「ひでまる」として、都内の築35年リノベマンションでの男性パートナーとの2人暮らしを、SNSを中心に発信。ディズニーストアや美術館のミュージアムショップなどでのVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の経験を活かしたルームスタイリングは、数ヶ月先まで予約が埋まるほど。著書に『47㎡、2人暮らし 大好きだけが並ぶ部屋作り』(小学館)。
ものの整理は過去の自分と向き合うことでした
――「ひでまる」の愛称で、ルームスタイリスト・整理収納アドバイザーとして大活躍ですね。ひでまるさんがお仕事を始めたきっかけを教えてください。
ひでまるさん(以下、ひでまる) コロナ禍で在宅を余儀なくされたとき、引っ越して半年のおうちを住み心地よくしたいと、整理収納アドバイザー2級の講座を受講したことがきっかけです。当時の私は、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)という店舗や売場を魅力的に見せる仕事をしていたので、「整理整頓も掃除もやればできる」と思っていました。でも実は、全くできていなかったんです(苦笑)。
講座では「整理とは、ものを分別して不要なものを手放すこと」と教わります。この「不要なもの」を、“使える”か“使えない”かで判断すると、今の時代は、使おうと思えば“使える”ものが多い。だから、気がつくと“使えるもの”に囲まれてしまうんです。
当時の私もそうでした。洋服が大好きで、Tシャツは700枚、靴は40足、バックも60〜70個持っていて、今は寝室として使っている部屋がぎっしり。調理道具も好きだから、お鍋だけでも16〜17個ありました。何もかもいっぱいいっぱいなのに、使っているのはほんの一部で……。
私は“使える”ものを残していただけで、“使いたい”ものを選んでなかったって、雷に打たれたような気持ちになりました。そして、その日の夕方から2ヶ月間、仕事以外の時間はすべて家の中の整理に費やしました。
最後の整理が済んだのは、2020年8月の終わりです。これで全て終わると気づいたら、涙が止まらなくなっちゃって。ものの整理はおうちがスッキリするだけではなく、過去の自分と向き合うことでした。そしてその時、これからの人生は“大好き”と暮らそうと思ったんです。
同時に「この想いを伝えたい」と一念発起して、半年後に会社を退社し、資格を取ったり勉強をしながらInstagramを中心に活動を始めました。今は、Instagramをベースに、企業や個人のコンサルティング、セミナー、講演会などで、ものと向き合い暮らしを変えることで、自分らしく生きる人を増やしたいと活動しています。
大好きだけが並ぶおうちにするための「3つ」の秘訣
――今では“大好き”だけが並ぶおうちですが、その秘訣を教えてください。
ひでまる 秘訣は3つ。「“使いたい”ものを選ぶこと」「使用頻度が高いものをいちばん取り出しやすい場所に収納すること」「隙間時間を活用すること」です。これは、整理整頓・お掃除の基本ステップでもあります。
まずは、“使いたい”ものを選ぶこと。ものの整理をするときに「使っている、使っていない」という選び方もありますが、今使っていなかったとしても「本当は使いたい」というものもあると思います。だから「使いたい、使いたくない」で考えると、整理しやすくなりますよ。
整理ができたら、使用頻度が高いものをいちばん取り出しやすい場所に収納します。反対に、年に1回しか使わないような使用頻度が低いものは、取り出しづらい場所でもどこにあるか把握できていればOK。このステップを踏むと、ものの住所が決まるので、使った後で戻しやすくなり、お掃除もしやすくなります。
そのうえで、お掃除は隙間時間を活用する。お掃除へのハードルも下がって、こまめにお掃除するのでキレイが保ちやすくなりますよ。おすすめは、お掃除にどれだけ時間がかかるか具体的に計ること。
たとえば、換気扇の上を拭くのに何分かかるか調べて、2分で終わるとします。それまで「けっこう時間がかかりそう」と思い込んでいたものが2分で終わるなら、お湯を沸かしている間とか電子レンジでチンしている間とか、日々の隙間時間ってありますよね。その時間をお掃除にあてればいいんです。
――なるほど! ちなみにひでまるさんのおうちも荒れることはあるんですか?
ひでまる あります、あります! 人が暮らしていたら散らかるのは当たり前。ただ私の場合、使いたいものに絞り、ものの住所が決まったこと。そして隙間時間を使ってお掃除することで、リセットしやすくなりました。
あとは、ストレスを溜めないことも、キレイを保つ秘訣かもしれません。私は、整理整頓もお掃除も、自分のハードルがあがらない方法にフォーカスしています。
そのひとつが、導線。たとえば衣類なら、洗濯→干す→たたむ→しまうがゼロ移動でできるように工夫しています。
もう一つが、年末の大掃除をやめたこと。大掃除は日本の古い風習ですが、私の場合は大掃除が終わらず年を越してしまうこともあって、ストレスのもとでした。今は寒くて忙しい年末には無理してやらず、年間で計画をたてて分散することで、心地よく年が越せています。
水回りの整理整頓・お掃除のコツは?
――ここからは、キッチン・お風呂場・洗面所の水回りの整理整頓・お掃除のコツを教えてください。まずはキッチンの整理整頓からお願いします!
ひでまる キッチンは、おうちの中でいちばんものが多く、細々とした小物も多い。さらに毎日使う場所です。優先順位をつけて、使用頻度の高い一軍を取り出しやすい特等席に収納しましょう。
わが家の場合は、キッチンの引き出しが特等席です。
立ったままスッと引き出せるので、シンク下の引き出しには包丁・まな板・ざる・ボウル、計量カップ、そしてカトラリーと、水回りで毎日使うものを立てて収納しています。
コンロの下には、使用頻度が高いフライパンやマルチポットなどの調理アイテムを入れています。
――食器も重ねて置かず、立てて入れるのですね。キッチンの表には必要最小限しかものが置かれていないので、お掃除もしやすそうです。続いて、キッチンのお掃除のコツも教えてください。
ひでまる 私は隙間時間であちこちをこまめに拭くのですが、ウエスや雑巾などの布物を使わなくなりました。というのも、布物は毎日のように煮沸消毒をしないと、雑菌が繁殖してしまう。ぱっと見はキレイでも、拭きながら雑菌をぬり広げている可能性もあって……。
毎日煮沸消毒をするのは私には難しいので、キッチンにアルコール入りのウェットシートを置いています。これさえあれば、お湯を沸かしているときや煮込んでいる間などの隙間時間に、サッと拭けますよ。ケースは『無印良品』です。
同時に、私がやってよかったと感じているのが、五徳は壁にかけておくこと。100円均一の『ダイソー』で買った透明のフックを利用しています。
油汚れや吹きこぼれなど、ガス台はどうしても汚れやすく、油汚れがついたまま使うと黒焦げになり、汚れが汚れを呼んでしまいます。
だから私は、五徳は使い終わったら洗って壁へ。そうすればガス台をウェットシートで拭きやすく、掃除もすぐに終わります。
あとは、食器を洗った後に手ふき用のタオルでシンクを拭きあげる習慣をつけるのもおすすめ。水気や油分が残りにくくなり、水アカやヌメりなどの原因を防ぎ、キレイに保ちやすくなります。
――次に、お風呂の整理整頓について教えてください。
ひでまる お風呂も、水分や油分が水アカやヌメり、カビなどの原因になるので、お掃除しやすく整理整頓しましょう。わが家のお風呂は、グッズを全て浮かせて掃除しやすくしています。
使っているのは、『無印良品』のフック付きクリップや、100円均一の『Seria』で見つけた磁石付きの歯ブラシスタンドなどです。お風呂の壁に磁石が入っているので、磁石がくっつくんです。
また、シャンプーやリンスもいろいろな種類を置きがちですが、わが家は全て1種類ずつ。いろいろなパッケージが並ぶと見た目がごちゃごちゃするので、『無印良品』のボトルに詰め替えています。
――お風呂は、整理整頓とお掃除をセットで考えるんですね。
ひでまる そうです。さらに、お風呂掃除もわざわざやるのはストレス。
私はお風呂に入るたびに、シャワーがお湯に変わるまでの1分間で、気になる部分をブラッシングしたり磨いたりする隙間掃除をしています。これなら短時間で済むうえに、カビ取りスプレーのような特別な掃除用品も不要です。
――こまめにお掃除するからこそ、強力な洗剤がなくてもキレイなままなんですね。最後に、洗面所について教えてください。
ひでまる シンク周りに置くものは、極力少なく、シンプルにすることがおすすめです。
見た目がスッキリするだけでなく、ものが少ないとお掃除するときにもストレスがありません。わが家では、洗面所のシンク周りにはハンドソープとマウスウォッシュだけ。歯ブラシは、パートナーと相談してお風呂に置くことにしました。
また、下着・靴下・ハンカチは、洗面台の下にシンデレラフィットした『無印良品』の引き出しにしまっています。ポイントは、洗濯→乾燥→収納までが、ゼロ移動で済むこと。
そして、たたむ手間も減るように、引き出しは中身が見えないホワイトグレーの仕切り付きを選びました。クルクルッと丸めて、仕切りひとつに1セットずつしまうだけです。
――お掃除は、どうされていますか?
ひでまる 使ったら拭きあげる習慣をつけています。ティッシュでも、手や体を拭いた洗濯前のタオルでもOK。要は、水気や髪の毛、石鹸カスなどを残さないことで、汚れが溜まりづらくなります。
――キッチン、お風呂、洗面所と水回りの整理整頓とお掃除について伺いましたが、日々の継続が大事なのだなと感じました。
ひでまる そうですね。隙間時間を活用して、拭いたり、磨いたり、ものを戻したり、溜め過ぎないこともコツかもしれません。
そして、ストレスを溜めないように、ハードルを下げる工夫をすること。
というのも、おうちを整理整頓したりお掃除したりすることは、一度やれば終わりではなく、人が住んでいる限りずっと続きます。これは全員一緒です。だからこそ、自分が心地いい暮らし方やものの持ち方に、一度向き合っていただけたらと思います。
とくに忙しい人は「忙しいから後で」「時間ができたら」となりがちですが、忙しい人ほど無理やりにでも、今からでも向き合ったほうがいい。一度見直すと、その後からめちゃくちゃラクな人生が始まるので! 今日お話したことが、何らかのヒントになればうれしいです。
綺麗でお洒落なおうちの裏側には、たくさんの工夫が詰まっているんですね。とってもわかりやすく教えてくれたひでまるさん。
皆さんも“無理なく、少しずつ”おうちの整理整頓・お掃除に取り組んでみてはいかがでしょうか?
ひでまるさん関連リンク
【著書】
47㎡、2人暮らし 大好きだけが並ぶ部屋作り(小学館)
【Instagram】hidemaroom