工場を特別公開! 安心・安全のタカギの製品はこうして生まれる

文=長谷川浩和/羽生田菜月

九州の玄関口となる北九州エリア。古くは大陸との貿易交流の拠点として栄え、美しい海、見晴らしのいい山々に囲まれる自然に恵まれたエリアにタカギの本社工場があります。ここは蛇口一体型浄水器や散水用品など、タカギ製品を生み出す心臓部です。今回は、日ごろ見ることができないタカギの工場内部へ皆様をご案内します。


専業メーカー タカギの原点は
ポリカンポンプ!?

本社の外観。ここからタカギの歴史は始まりました。

北九州市小倉南区は、タカギ創業の地です。JR小倉駅からのびる地元の足、北九州モノレールの終着駅があるエリアにタカギの本社・工場があります。

工場はフォークリフトやトラックが行き交い、いつも活気ある雰囲気です。

工場内には、タカギの歴史や過去の製品ラインアップ、蛇口一体型浄水器の製造工程などが紹介されている「ミニミュージアム」があります。ここにはタカギを象徴する広告が展示されています。

展示でひと際目立つ広告は当時大きな話題となりました。

時代を感じるインパクトのある広告。これは、灯油ポンプ「ポリカンポンプ」の広告です。この製品こそ、タカギの原点。メーカーとして生み出した最初の製品です。

発売された1970年代後半は、18リットルのポリタンクから灯油を石油ストーブに移す際、タンクを開けてからポンプを入れ、給油が終わったらポンプを抜いてタンクにふたをする工程が一般的でした。ただ、ポンプをタンクから抜く際に油が落ちるため、下に新聞紙を敷かなければならないなど、一般家庭ではその手間が悩みの種でした。

ポリカンポンプはお客様に寄り添うものづくりの原点です。

ポリカンポンプはその悩みを解消しました。タンクにポンプをつけっぱなしにでき、倒れても油がすぐに出ないことがお客様の心をつかみました。100円ポンプの時代に、1980円のポンプが累計20万本販売され、多くのお喜びの声をいただきました。お客様に寄り添うタカギの製品づくりは、ここから始まりました。(ポリカンポンプは今も発売中です!



ものづくりを支える
タカギの「金型」技術

続いて「金型部」をご案内いたします。金型部の入り口には、スローガンが目立つように掲示されています。壁に貼られた技能検定の合格証書は、「匠」の技術をもつ金型技術者を多く抱える証です。

タカギが大事にするものづくりへの思いが壁一面に貼られています。

タカギの技術者が持つ資格の数々。


ものづくりの要ともいえる金型。では、金型とはどんなものなのでしょうか。金型とは「何らかの製品を作るために金属で作った器の総称」で、実は私たちの身近な場所にも金型はあります。

突然のタイ焼き!?でも実は金型で作られています。
※あくまで身近にある「金型」の例になります。タカギではタイ焼きの金型は製造しておりません。

例えば「タイ焼きを作るための器」も金型です。金型があることで一度にたくさんのタイ焼きを、何度でも作ることが可能になります。一度金型を作ることで、同じ品質のものを安定して生産することが可能になり、生産工程の自働化を図りやすくなります。

金型を製造する「金型事業」は、タカギの主要事業のひとつです。蛇口一体型浄水器や散水用品など自社製品以外の金型も手掛けています。例えば、車載用のテールランプなど、自動車部品を作るための金型も作っています。

タカギでは実に10トンもある大型の金型まで対応しています。

家電・通信機器・日用品向けでは、生活に馴染みがある商品の金型を多く作っています。赤ちゃん用のスプーン&フォークや殺虫剤のノズル部分を作るための金型なども手掛けています。

プリンタや電話機など、あなたの身近にある製品には金型が不可欠です。

この金型技術はタカギの製品づくりにも活きています。例えば、散水用品や浴室用シャワーヘッド。きめ細やかなシャワーを生み出すには、微細な穴が不可欠です。ここでも熟練の金型技術が活躍します。

高精度な金型製作はタカギのものづくりの下支えとなっています。

金型が磨かれていれば、つるつるの綺麗な面を作り出すことができます。成形品を作る際には、樹脂が飛び出して余分な部分ができます。これをバリといいますが、削るのに手間がかかります。良い金型を使うとバリがほとんどできないので、後工程を減らすことに貢献します。蛇口一体型浄水器の部品用の金型でも、こうした高い技術が活きています。

壊れずに長く使い続けられる金型製作ができるのもタカギの強みです。

金型技術者は、1/1000mmの精度に挑むといわれます。長い歴史と経験で積み上げられた金型技術だからこそ、ものづくりをスピーディーかつ柔軟に行うことができます。



最新設備×熟練技術
ものづくりの現場から

いよいよ工場内部へご案内します。まずは金型部の製造現場です。

ゴーっという大きな機械音の中で、存在感のある大きな機械が目に留まります。マシニングセンターと呼ばれる、金型の製作に使われる工作機械です。こうした最新鋭の機械を活用することで、中・大物の金型加工が可能となります。

最新鋭の機械は、複雑で微細な部品加工も可能にします。

活躍するのは機械だけはありません。工作機械やCAD/CAMといったソフトウェアなど技術革新で金型の製造方法も日々進化していますが、一方で金型職人による「技能」も不可欠です。

「技能」とは熟達や勘といった、暗黙知が含まれる能力のこと。工具の芯出し、加工条件の設定、追い込み加工、すり合わせ後の調整には、高精度な金型づくりに欠かせない匠の技術が生きています。

金型づくりには信頼出来る技術者の存在が欠かせません。

最後の仕上げは、匠の手で行います。

続いて、タカギの主力製品である散水用品を作る「成形工場」、「組立工場」をご案内しましょう。「成形」は言葉の通り「形を作ること」で、さまざまな成形技術で製品らしく形作られていきます。

散水機のホースは「押出成形」と呼ばれる技術で成形されます。まるでトコロテンのように加熱溶融させた樹脂(プラスチック)が連続的に押し出されながら、成形されていきます。

押出成形は合成樹脂に対する成形加工の中でも特に量産性に優れた方法といわれています。

樹脂を押し出した後、水で急速に冷却する様子。

インナーとなる樹脂が押し出されたあと、糸が巻かれ、その後色付きの樹脂を被せる工程を経て、私たちが普段見るホースの姿になっていきます。

色付けされ、巻かれていくと製品のベースが完成です。

ホースの束が積み上がる様子は圧巻。

組立工場では、さまざまな部品を組み立て、散水機として形作られていきます。

ホースリールを組み立てる工程、ノズル部分の動作を確認する工程、製品にシールを貼る工程……タカギスタッフは皆、真剣なまなざしで黙々と作業を進めます。工場というと機械的で無機質な印象があるかもしれませんが、タカギの工場は機械だけでなく、人の手でも丁寧な作業を行っているのが特徴です。

トヨタ生産方式を随所に採用し、継続的な改善活動と効率化のもと、お客様にとって安心・安全な製品が作られています。

現場では、性別、国籍、年齢など多様な人材が活躍しています。


評価試験センターで行う
際限なき品質追求

工場内には「評価試験センター」と呼ばれるラボのような雰囲気が漂う場所があります。タカギ製品の分解パーツ、そして薬品や検査装置などがずらりと並んだ評価試験センターでは、製品を作るプロセスとは違う立場・目線で、タカギ製品を厳しくチェックしています。

例えば、蛇口一体型浄水器の流水を厳しくチェックするプロセス。

シャワーとストレートの切り替えを何度も行うなど、念入りにチェックされていきます。

シャワーの水量に問題がないか、暮らしの中で長く使って耐久性が落ちないか、不測の事態が起きていないかなど、実際の動作を確認しながら厳しく確認しています。評価試験をする製品は、工場のラインから抜き打ちでピッキング。「Made by takagi(メイド・バイ・タカギ)」の安心感をお客様にお届けする大切なプロセスです。

評価試験センターには、品質保証のレベルを高めるための最新設備も揃っています。電子顕微鏡もその一つ。電子顕微鏡は電子線を用いて測定対象物の拡大像を得ることができ、光学顕微鏡よりはるかに高い倍率での形態観察が可能となります。数万倍の倍率で見ることができるので、生きたままの細胞も見ることができます。目に見えないレベルの精度で厳しく評価試験が行われています。

高倍率観察ができる電子顕微鏡は医療分野などでも活躍しています。


企画開発から製造、物流まで
「製販一体」で安心・安全をお届けします

評価試験センターでの研究は、タカギの製品開発にも生かされています。例えば、蛇口一体型浄水器のボタンの機能性。目隠しをして色々なボタンの操作性・快適性を徹底的に検証しています。

常にお客様の気持ちに立ち「理想の製品」を目指しています。

評価試験センターの一角には、台所やバスルームが再現された場所もあります。時には料理をして蛇口一体型浄水器の操作性を検証したり、シャワーヘッドをバスルームで体感したりすることも。お客様に安心・安全の製品をお届けするために、評価試験センターではこれからも検証・研究に努めます。

実際に製品を体感することも、ものづくりの大事なアプローチです。

工場内にある試験用のバスルームやキッチン。

蛇口一体型浄水器・散水用品の専業メーカーであるタカギは、製造と販売を一貫して自社で行っていることが特徴です。様々な部署が連携、切磋琢磨し、安心・安全な製品をお届けしています。

物流センターを自社で構えているのも特徴です。工場と隣接する形で、お客様に製品を届ける最終拠点、物流センターがあります。お客様に迅速かつ確実に製品をお届けするために、パレタイジングロボット(荷積みや荷下ろしの作業を人間のかわりに行うロボット)や浄水カートリッジ自動発送機など、設備面も充実させています。

タカギでは、ご契約いただいたお客様のご希望の交換サイクルにあわせて、蛇口一体型浄水器用の浄水カートリッジを工場から直送する定期お届けサービスを行っています。3か月、4か月といったお客様ごとに異なる交換サイクルの情報が管理され、迅速かつ確実にお届けしています。

工場内にある物流倉庫の様子。

今日もこの物流倉庫から全国のお客様へ商品をお届けしています。

1961年に創業したタカギ。現在、園芸散水用品では国内トップシェア、蛇口一体型浄水器は新築マンションの導入率でトップです。ポリカンポンプから始まる、お客様に寄り添ったものづくりの精神は、今も変わらず受け継げられています。

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